従来のつけ麺における最大の課題は、「冷水で締めた麺同士が時間の経過とともにくっつき、乾いてしまうこと」でした。この物理的な問題を解決するだけでなく、麺料理としての価値を根本から引き上げたのが昆布水の導入です。
フードサイエンスの視点から見ると、昆布水つけ麺の完成度は計算し尽くされています。昆布に含まれる高濃度のグルタミン酸を纏った麺が、鶏ガラや豚骨、魚介節のイノシン酸をベースにした温かいつけ汁に入った瞬間、人間の舌の上で旨味の相乗効果(単一の旨味の約7〜8倍に増幅される現象)が引き起こされます。
さらに、昆布特有の水溶性食物繊維(フコイダンやアルギン酸)による適度なとろみが麺の表面をコーティングし、つけ汁の持ち上げを自然にコントロールします。麺の小麦香をマスキングせず、一口ごとにグラデーションのように味が深まっていく体験価値こそが、多くの食通を虜にする決定的な要因となっています。