多くの描き手が直面する顔のバランス崩れ原因は、手の器用さではなく「観察と手順のズレ」に起因しています。特に初心者が陥りがちな最大のトラップが、目や鼻などの個別パーツから輪郭を埋めるように描き進めてしまう手順です。
認知心理学の観点からも、人間の脳は他者の顔を認識する際、目や口といった表情を司るパーツへ視線を集中させる傾向(特徴優先バイアス)を持っています。このバイアスに引きずられたまま作画すると、パーツごとの配置に気を取られ、頭部全体の立体構造や頭蓋骨の傾きに対する意識が完全に欠落してしまいます。
さらに、利き手の可動域による「ストロークの歪み」も作画を狂わせる大きな要因です。右利きの場合、左頬のカーブは手首の自然なスナップで美麗な弧を描きやすい一方、右頬のカーブは手首を押し込む動作になるため直線化しやすくなります。この身体的制約を自覚しないまま感覚に頼って線を引くことが、左右で厚みや角度が食い違う直接的な原因となっています。