皮弁は、組織の移動方法や含まれる組織構成によって細かく分類されます。このバリエーションの広さこそが、頭部から足先まであらゆる難治性創傷に対応できる理由です。
1. 組織の移動方法による分類:有茎皮弁と遊離皮弁
まず移動の仕方によって局所皮弁、有茎皮弁、そして遊離皮弁に大別されます。
局所皮弁は、傷口のすぐ隣にある皮膚と皮下組織を切り離さず、回転させたりスライドさせたりして欠損部を覆う手法です。顔面の小さな腫瘍切除後などによく用いられ、周囲の肌と色や質感が一致しやすい大きな利点があります。
有茎皮弁(ゆうけいひべん)は、組織に血液を送る太い血管の束(茎=血管柄)をつなげたまま、皮下にトンネルを掘るなどして患部まで組織を引っ張ってくる方法です。血管を一度も切り離さないため、血行途絶のリスクが比較的低く、顕微鏡を用いた複雑な血管吻合を必要としません。
一方、遠く離れた部位へ組織を運ぶ際に用いられるのが遊離皮弁(ゆうりひべん)です。太もも、お腹、背中などから血管ごと組織を完全に切り離し、患部にある動脈と静脈に顕微鏡下(マイクロサージャリー)で縫合して血行を再開させます。髪の毛よりも細い針と糸を用い、直径1〜2ミリメートルの血管を1針ずつ繋ぎ合わせる職人技のような精密技術です。身体のどの場所へも十分な組織を移植できるため、大規模な組織欠損に対する切り札となっています。
2. 組織の深さによる分類:局所皮弁と筋皮弁
移動させる組織の厚みによっても名称が変わります。皮膚と皮下脂肪だけで構成される「皮下皮弁」に対し、筋肉を含めて大きく採取するものを筋皮弁(きんぴべん)と呼びます。背中の広背筋や腹部の腹直筋などを用いた筋皮弁は、血流が極めて豊富で感染に強く、大きく窪んだ欠損部をしっかりと埋めるクッションの役割を果たします。
3. 患者の身体負担を激減させた「穿通枝皮弁」の最新術式
2000年代以降、再建外科の世界を大きく塗り替えたのが穿通枝皮弁(せんつうしひべん)と呼ばれる最新術式です。
従来の筋皮弁は、太い血管を確保するために下地にある筋肉ごと採取せざるを得ませんでした。その結果、術後に腹壁が弱くなってヘルニアを起こしたり、腕や脚の筋力が低下したりする「ドナー部の犠牲(採取部の後遺症)」が避けられない課題となっていました。
しかし解剖学の進歩と超高解像度エコー機器の登場により、「筋肉を丸ごと取らなくても、筋肉の隙間を貫いて皮膚へと伸びる微小な血管枝(穿通枝)だけを丁寧に剥離すれば、皮膚と脂肪だけで十分生き残れる」ことが実証されました。腹部の筋肉を傷つけずに脂肪と皮膚だけを採取するDIEP flap(深下腹壁動脈穿通枝皮弁)などはその代表例です。採取部位の筋力が温存され、術後の回復スピードと運動機能維持の面で画期的な成果を上げています。