一般に「身長を伸ばす手術」と呼ばれる施術の医学的正体は、整形外科領域の骨延長手術(仮骨延長法)です。骨を切断し、その切断面の間に生じる「仮骨(新しく再生される骨組織)」を、専用の器具を用いて1日あたり約0.75〜1mmという微小なペースで牽引・延長していきます。骨が徐々に引き伸ばされる性質を利用し、最終的に骨組織が硬化することで恒久的な骨長を獲得する仕組みです。
では、骨延長手術で何センチ伸びるのか。解剖学的な安全性から、一度の手術で伸ばせる限界は元の骨長の10〜15%程度(5〜8cm前後)とされています。太ももの骨(大腿骨)とすねの骨(脛骨)の両方を段階的に手術すれば10cm以上の延長を達成した事例も存在しますが、身体バランスの崩壊や関節機能への負担は指数関数的に跳ね上がります。
術式に関しては、医療技術の進歩とともに選択肢が変化してきました。基本となるイリザロフ法とLON法の違い、そして2026年現在の身長を伸ばす手術の最新動向を押さえておく必要があります。
古くから実績のある「イリザロフ法」は、脚の外側を金属製のリングとワイヤーで固定する古典的な創外固定法です。感染管理の負担や装着時の著しい日常生活制限が課題でした。これに対し、骨の内側に金属製の髄内釘を入れ、外側に創外固定器を併用して早期に外枠を外せるようにしたのが「LON法(Lengthening Over Nail)」です。
さらに現在では、体外からの電磁波誘導によって内部のシリンダーを遠隔でミリ単位伸長させる「完全体内式電磁誘導ネイル(Preciceなど)」の改良型が開発され、外枠を一切装着せずに骨を伸ばすアプローチが主流化しつつあります。しかし、完全体内式であっても骨を切断する侵襲性の高さや骨癒合の不確実性が消え去るわけではありません。