サビのバックで響く、憂いを帯びた透明感ある女性の裏声。このコーラスを担当しているのが、当時すでに独自の地位を確立していた椎名林檎であることは、現在では広く知られる事実です。しかし、この伝説的なコラボレーションは、入念に計画された商業的プロモーションではなく、当時の下北沢やレコーディングスタジオが持っていた濃密な空気感から偶然生まれました。
2000年秋、くるりが東京のスタジオでアルバム『TEAM ROCK』のレコーディングを行っていた際、隣のスタジオに居合わせたのが椎名林檎でした。岸田が弾く印象的なピアノリフレインを聴いた彼女がスタジオにふらりと現れ、セッションの流れから自然発生的にマイクの前に立つことになったといいます。岸田は後年のインタビューで「彼女の声が入った瞬間、平面的だった楽曲の景色が一気に奥行きを増し、立体的な映画のようになった」と述懐しています。
本曲が収録された3rdアルバム『TEAM ROCK』は、従来のギターロックバンドという枠組みを破壊し、サンプリングや打ち込み、ダンスミュージックの手法を大胆に取り入れた実験作でした。「ばらの花」の根底を流れる淡々としたリズムマシン風のドラムと、ループするピアノの構造は、UKのハウスやテクノに影響を受けた当時のくるりだからこそ到達できた音楽的達成です。