江戸の性愛表現において忘れてはならないのが、葛飾北斎の手による傑作『蛸と海女』に代表される異色の作品群である。大蛸と小蛸が海女の肉体を絡めとり、口唇や触手で全身を愛撫する衝撃的な構図は、現代のクリエイターたちにも計り知れない影響を与え続けている。
人間同士の交わりにとどまらず、異形の存在とのセンセーショナルな合体をエロティックかつ幻想的に描き出した発想力には目を見張るものがある。エロスとユーモア、そして圧倒的なデッサン力が融合したこの作品は、江戸の人々が持っていた性のイメージの広がりと、限界のない表現欲求を象徴している。