本作の根幹にあるのは、がん医療の最前線を走り続けてきた医師・垣添忠生氏とその妻・昭子さんの真実の物語です。ドラマ『妻を看取る日』のあらすじは、主人公が長年連れ添った妻の体調不良に気づき、精密検査の結果、予後が極めて厳しい進行がんであることが判明する衝撃的な局面から幕を開けます。数々の患者の手術を成功させ、がん制圧に生涯を捧げてきた主人公にとって、最愛の妻の病変はあまりにも残酷な現実でした。
当初はあらゆる先進的治療や抗がん剤治療を模索するものの、病状は容赦なく進行していきます。繰り返される入退院、副作用に苦しむ妻の姿を目の当たりにした主人公は、ある重大な問いに直面します。「延命治療を続けることが、本当に妻にとっての幸せなのか」。病院のベッドでチューブにつながれて過ごす時間よりも、住み慣れた自宅でお気に入りの美術品や音楽に囲まれて過ごす穏やかな時間を選びたいという妻の微かな願いを受け止め、主人公は自宅での看取りを決断します。
物語の核心となるネタバレ結末において描かれるのは、決して奇跡の回復や劇的なファンタジーではありません。訪問診療医や看護師の支えを受けながら、夫自身が注射や服薬の管理、排泄の世話に至るまで献身的に介助を続ける過酷な日常です。そして迎える最期の朝、意識が混濁する中で妻が夫の手を握り返し、静かに息を引き取る瞬間は、視聴者の胸を激しく揺さぶります。しかし物語はそこで終わらず、妻の死後に主人公を襲う「激しい自責の念」と「深い喪失感(ペットロスならぬ配偶者喪失の悲嘆)」、そしてそこから全国のがん患者支援へと一歩を踏み出す再生の結末までを丁寧に描き切っています。