「なぶる」という語彙は、決して一握りの狭い集落だけで使われている閉ざされた言葉ではありません。では、なぶる方言どこの地域で日常的に息づいているのでしょうか。日本各地の言語生態系を俯瞰すると、驚くほど広大な分布が見えてきます。
まず代表格となるのが、嬲る方言関西のエリアです。特になぶる方言京都大阪や兵庫、滋賀などでは、幼児に対して「めっ!そこなぶったらあかんやろ」と注意したり、大人が「ちょっとその設定、なぶってみるわ」と述べたりする光景がごく日常的に見られます。この地域では、単に触れるだけでなく「調整する」「手を加える」という能動的な意味合いも含みます。
さらに東へ目を向けると、なぶる方言東海地方(愛知県・岐阜県・三重県)でも極めて頻繁に使われています。名古屋弁や美濃弁において「傷口をなぶるとバイ菌が入る」「時計をなぶって壊してしまった」といった表現は、高齢層から20代・30代の若年層に至るまで広く浸透しています。
西日本全域を見渡せば、なぶる方言四国中国地方(徳島県、香川県、愛媛県、高知県、広島県、岡山県など)でも同様に「いじる」「いたずらする」の意味で広く通用しています。興味深いことに、嬲る方言東北地方の一部沿岸部や旧領の記録にも「手でかき混ぜる」「いじくり回す」という意味での残存が確認されており、全国各地の周縁部に同一の語源が点在していることがわかります。