「物件を内見すらしないまま、プレビルドの段階で数億円が即日完売する」。現地の大手デベロッパー、エマール・プロパティーズの販売カウンターでエージェントが漏らした言葉は、加熱する市場の異常さを如実に物語る。海外不動産投資のマネーが世界各地から流れ込み、ドバイの地価を押し上げ続けている。ロシア、英国、インド、そして日本からの富裕層マネーも例外ではない。
しかし、無警戒な楽観論には冷や水が浴びせられつつある。最大の誘因だった税制優遇に、明確なパラダイムシフトが訪れているからだ。アラブ首長国連邦経済省が導入した法人税制をはじめ、国際的な金融透明性の基準に合わせたコンプライアンス強化が加速している。かつてのような「書類一枚で完全無税」という抜け穴は事実上消滅し、真の実態を伴うビジネス活動と高額な維持コストが求められるようになった。税務リスクを軽視して飛び込んだ移住者が、本国の税務当局と現地法制度の板挟みに遭い、想定外の追徴やコスト増に頭を抱えるケースが水面下で急増している。