南青山のランドマークとして知られる小原流会館。その地下飲食街に店を構える同店を語るうえで、創業者の「ふーみんママ」こと斉風瑞(さい・ふうみ)の存在は欠かせない。台湾出身の両親のもとに生まれ育った彼女が創り出した味は、正統派の中華料理とも、一般的な台湾家庭料理とも一線を画す独自の優しさを宿している。
斉風瑞が目指したのは、毎日食べても決して飽きることのない「家族のための料理」だった。日本の旬の食材を大胆に取り入れ、どこか懐かしくも洗練された味覚へと昇華させた料理の数々は、瞬く間に近隣で働くクリエイターや文化人たちの間で評判となった。時代の波に揉まれながらも、彼女が厨房で貫き通した真摯な姿勢覚は、激変する飲食業界のなかで今なお眩い光を放ち続けている。