運ばれてきた丼の前に座ると、まず目を奪われるのが表面に細かな脂が浮く澄んだ琥珀色のスープだ。一口啜れば、まろやかな豚骨のコクが舌の上に広がり、追って煮干しや香味野菜の奥深い余韻が静かに押し寄せる。濃厚なのに驚くほど後味が軽い。多くのラーメン評論家が「唯一無二のバランス」と称賛する理由はここにある。
仕込みは早朝から始まる。豚骨を濁らせず弱火でじっくりと炊き出し、澄み切った清湯を取り出す作業は熟練の感覚がすべてを左右する。寸胴の温度変化や骨の状態を見極めながら火力をミリ単位で調整する作業は、まさに職人の執念だ。そこに合わせる醤油ダレは、創業以来継ぎ足されてきた秘伝のもの。塩味の角が取れた円熟の醤油が、骨と肉の旨味を極限まで引き立てている。