なぜここまで恋愛未経験者が増えたのか。その構造的背景について、家族社会学の第一人者であり「パラサイト・シングル」や「婚活」という概念を世に提唱した中央大学教授の山田昌弘氏は、若者を取り巻く経済環境と心理的防衛の観点から鋭く分析している。
山田氏が指摘するのは、現代社会における「リスク回避志向」の肥大化だ。実質賃金の停滞や将来不安がぬぐえないなかで、若者たちにとって恋愛は「多大な時間とお金を投資したにもかかわらず、振られたり傷ついたりして終わるハイリスクな営み」とみなされつつある。動画配信やSNS、ゲームなど、安価で確実に快感を得られるコンテンツが身の回りにあふれる現在、傷つくリスクを冒してまで不確実な他者との関係に飛び込む動機が希薄化しているのだ。
さらに、未婚化・少子化問題の深刻化に伴い、職場や地域コミュニティにおける「お節介な仲介者」が完全に姿を消したことも大きい。かつては個人の意思とは無関係に見合いや紹介が用意されていたが、現代は完全な自由恋愛市場である。自ら能動的にアプローチを仕掛けない限り、出会いの機会そのものが訪れない社会構造が、交際未経験のまま年齢を重ねる要因を強化している。