島倉千代子の代表曲といえば、デビュー曲『この世の花』や『からたち日記』、そして昭和の終わりに社会現象となった『人生いろいろ』が挙げられます。しかし、歌手人生最大の危機を迎えていた時期に生まれたのが、1981年(昭和56年)発売の『鳳仙花』でした。
当時、島倉千代子は知人の保証人になったこと等に端を発する巨額の借金を背負い、精神的にも肉体的にも極限状態に追い込まれていました。そんな彼女の姿を見つめていた制作陣が、「もう一度、島倉千代子という大歌手の原点に立ち返り、魂を揺さぶる楽曲を作ろう」と立ち上がったのが楽曲誕生のきっかけです。
作詞を手掛けた吉岡治と、作曲を担当した浜圭介は、島倉千代子の内に秘めた芯の強さと、悲運に打ちひしがれながらも凛と咲く姿を「鳳仙花」の花になぞらえました。吹き込みの際、島倉自身が譜面を見た瞬間に涙を流し、「これは私の歌だ」と直感したという逸話は、歌謡史に残る有名なエピソードとして語り継がれています。