マクドナルドといえば牛100%のビーフパティが代名詞ですが、てりやきマックバーガーの主役は一貫してポークパティ(豚肉)です。この仕様には、日本の食文化と味覚生理学に根ざした明確な必然性があります。
てりやきマックバーガーが誕生したのは1989年のこと。日本マクドナルドが日本人の嗜好に寄り添う戦略的ローカライズメニューとして開発した、記念碑的な日本発祥バーガーです。開発初期の試作段階では、同社の看板であるビーフパティを使ったてりやきバーガーも検証されました。しかし、牛肉特有の強い脂の風味や繊維質が、醤油や生姜、ニンニクを効かせた濃厚な和風てりやきソースとぶつかり合い、どうしても重たくしつこい後味になってしまうという課題に直面します。
そこで白羽の矢が立ったのがポークでした。豚肉が持つマイルドな甘みときめ細やかな肉質は、粘り気のある甘辛いソースをしっかりと抱き込み、噛むほどに旨味が口内に広がります。さらに豚の脂は融点が低く、ソースの温度やバンズの蒸気となじみやすいため、一口目から強い一体感を生み出す強みを持っています。この計算された肉選びこそ、35年以上にわたって飽きられることなく売上上位を維持し続ける最大の要因です。