「保湿クリームを毎日塗り込めば、皮膚が再生して肉割れは消える」という言説は、SNSや一部のアフィリエイトサイトで頻繁に見受けられます。しかし、形成外科や皮膚科の専門医への取材、および公式発表資料を総合すると、この主張には重大な医学的飛躍が含まれています。
肉割れの根本的な正体は、表皮のさらに下にある「真皮層のコラーゲン断裂」です。皮膚は外側から順に「表皮」「真皮」「皮下組織」の3層構造になっています。急激な体重増加、成長期の骨格の急伸、あるいは妊娠による体型の変化に皮膚の伸展が追いつかないと、弾力線維(エラスチン)や膠原線維(コラーゲン)を主成分とする真皮が引っ張りに耐えきれず、物理的に引き裂かれます。これが皮膚表面に透けて見えているのが肉割れです。
厚生労働省の医薬品医療機器等法(薬機法)に規定されている通り、医薬部外品や化粧品として市販されている保湿クリームが浸透するのは、表皮の最外層であるわずか0.02ミリの「角層」までです。真皮層は角層のさらに1〜2ミリ深くに位置しており、外用剤を塗布するだけで断裂したコラーゲン繊維が再結合することは構造上あり得ません。
Yahoo! JAPAN検索の医療機関監修データや症例解説においても「既にできてしまった肉割れに保湿クリームを塗っても、角層までしか浸透しないため、完全に消す効果は見込めない」と明記されています。自力ケアで期待できる効果は、あくまで「皮膚表面の柔軟性を高めて新たな断裂を予防すること」や「キメを整えて光の乱反射により溝を目立ちにくくすること」にとどまります。