スーパーの調味料棚を定点観測すると、従来のポン酢しょうゆの隣に、琥珀色や深みのある黄金色をたたえた「だしポン酢」のボトルがずらりと並ぶ光景が日常化しました。食品マーケティング関係者の調査データによると、卓上酢・ポン酢市場全体が成熟期を迎えるなか、出汁を前面に押し出した高付加価値ポン酢の売上構成比は前年比118%と右肩上がりの成長を記録しています。
このブームの根底にあるのは、現代人の味覚の変化とライフスタイルの構造的シフトです。従来のポン酢は「酢酸の強い酸味」と「柑橘のキレ」が前面に出る設計が多く、子どもや酸味に敏感な層からは敬遠される傾向がありました。しかし、だしポン酢は「酸味で食べる」から「出汁の旨味で食べる」への根本的なコペルニクス的転換を果たした調味料です。
さらに、共働き世帯の増加に伴う「タイパ(タイムパフォーマンス)調理」の需要が爆発的な後押しとなっています。酒、みりん、醤油、出汁を個別に計量することなく、これ一本を回しかけるだけで割烹レベルの味が決まる利便性が、忙しい現役世代の心をつかみました。「疲れて帰宅した夜でも、茹でた野菜や蒸し鶏にかけるだけでご馳走になる」という生活実感が、口コミの拡散を引き起こした最大の真相です。