フランス語で「煮る・沸騰させる」を意味する動詞「bouillir」に由来するブイヨン(bouillon)は、牛や鶏、魚の骨や肉、そして香味野菜やハーブ類を数時間かけてじっくり煮出し、そのエキスとうま味を抽出した「洋風の素だし(スープストック)」を指します。
西洋料理の味覚設計において、ブイヨンは料理の土台(ベース)を構築する役割を担います。素材が持つイノシン酸(動物性うま味)やグルタミン酸(植物性うま味)を水に溶け出させ、重層的なコクを作り出すための液体であり、原則としてそれ単体で飲むための完成料理ではありません。そのため、伝統的な製法で作られたブイヨンには、ごく微量の塩分を除いて強い味付けは施されていません。
用途や抽出する素材によって複数の種類が存在します。代表的なものとして、鶏ガラをベースにしたすっきりとした味わいのチキンブイヨン(ブイヨン・ド・ヴォライユ)、牛骨や牛肉を煮出した濃厚なブイヨン・ド・ブッフ、魚の骨やアラから短時間で取るフュメ・ド・ポワソン、香味野菜のみで取るブイヨン・ド・レギュームなどが挙げられます。いずれも後工程で加える食材や調味料の個性を引き立てる「キャンバス」としての機能を果たしています。