音楽、映画、文芸という主要カルチャーの3領域において、それぞれ第一線の評価を獲得している人物は、日本の近現代文化史を振り返っても極めて稀です。「甫木元空 読み方」を検索する人が後を絶たないように、その珍しい苗字は「ほきもと そら」と読みます。1992年生まれ、埼玉県出身。祖父の暮らす高知県四万十町にも深いルーツを持ち、現在は東京と高知を行き来しながら創作活動を続けています。
甫木元空を一躍有名にしたのは、2人組バンド「Bialystocks」のボーカリストとしての圧倒的な歌唱力とメロディセンスでした。伸びやかで温かみがありながら、どこか哀愁と神聖さを帯びたファルセットは、ソウルやフォーク、ジャズを横断する豊かなサウンドの中で圧倒的な個性を放っています。しかし、彼の表現活動は音楽の枠組みだけに留まりません。
長編映画監督としてのデビュー作『はるねこ』(2016年)や、自身の母の闘病生活と死を静謐な映像美で描き出した『はだかのゆめ』(2022年)で見せた映画作家としての非凡な才能。さらに、2023年に発表した小説『みどりいせき』で第170回芥川龍之介賞の候補に選出されるなど、文学界にも大きな衝撃を与えました。肩書きの掛け算ではなく、どの分野においても妥協のない純度で作品を生み出し続ける姿こそが、カルチャーファンを惹きつけてやまない最大の理由です。