インターネット上のQ&AコミュニティやSNSを調査すると、「尿の色が急に茶色っぽくなったが、寝不足のせいか」「疲れているからビタミン剤を飲んだら余計に濃くなった」といった投稿が数多く見受けられます。多くの生活者が、尿の変色を「一時的な体調不良」や「疲労の蓄積」と結びつけ、受診行動を先送りにしている実態が浮き彫りになっています。
しかし、総合病院の救急外来や泌尿器科の臨床現場を取材すると、背筋の凍るような事例が後を絶ちません。都内の大学病院に勤務する泌尿器科専門医は次のように実情を明かします。
「『ウーロン茶のような濃い尿が1週間ほど続いていたが、痛みがないので様子を見ていた』と来院された患者さんを検査したところ、進行した膀胱がんであったケースや、進行性の閉塞性黄疸を発症していたケースは決して珍しくありません。特に高齢者や多忙なビジネスパーソンほど、痛みを伴わない濃縮尿を『単なる水分不足』と自己診断し、手遅れに近い段階で担ぎ込まれる傾向が顕著です」
厚生労働省の患者調査および関連学会の報告によると、急性肝炎や進行性腎障害の初期において、患者の約3割が自覚症状として「尿の変色」を認知していながら、初診まで平均して2週間以上のタイムラグが生じていることが示されています。痛みを伴わない臓器の異変に対し、人間は防衛本能として「たいしたことはない」と思い込もうとするバイアスが働きやすいのです。