挿し木の成否を分ける第一の鍵は、作業を行う「時期」です。植物の生育ステージと外気温、湿度条件が合致していなければ、どんなに高度なテクニックを駆使しても発根率は急落します。
日本の気候において、挿し木の黄金期とされるのが5月中旬から7月上旬の梅雨期です。この時期は気温が20℃〜25℃と細胞分裂に適した範囲に安定し、大気中の湿度が80%前後に達するため、葉からの過度な蒸散が自然と抑制されます。春に伸びた新しい枝(新梢)が適度に硬くなり、生命力に満ちている点も理由の一つです。
一方で、近年の気候変動による「梅雨期の超短期化」や「6月下旬からの猛暑日」が植物に与える影響は無視できません。2026年現在の気候条件下では、気温が30℃を超えると切り口が腐敗しやすくなるため、春の挿し木は5月下旬〜6月中旬の初夏に前倒しで行うか、エアコン等で室温を22〜25℃前後に保てる室内管理を選ぶ愛好家が急増しています。
また、植物の種類や枝の状態によって適期は異なります。その年に伸びた柔らかい枝を使う「緑枝挿し(りょくしざし)」は初夏が最適ですが、前年に伸びて完全に木質化した枝を使う「休眠枝挿し(きゅうみんしざし)」は、樹液の流動が始まる直前の2月下旬〜3月中旬が適期となります。秋挿し(9月中旬〜10月)は、真夏の酷暑が和らぎ、残暑が落ち着いたタイミングを狙うのが鉄則です。