「々」の読み方を国語辞典で調べても、見出し語として単独で掲載されているケースはほぼありません。文化庁の国語施策や国立国語研究所の見解においても、「々」は漢字ではなく「漢字の繰り返し記号(約物・符号)」として定義されています。つまり、アルファベットにおけるアポストロフィ(’)や句読点(、。)と同じカテゴリーに属する記号なのです。
単独での読みが存在しないため、「々」の読みは常に直前に置かれた漢字の音訓に依存します。「佐々木」であれば直前の「佐(さ)」を繰り返して「さ」、「代々木」であれば「よ」、「散々」であれば連濁して「ざん」と発音されます。直前の文字がなければ音を持たない、いわば「前の文字の影」のような存在であることが、読み方を特定できない最大の理由です。
JIS規格(JIS X 0213)の文字コード体系においても、「々」は漢字セクションではなく「特殊記号」領域(点画・記号類)にコードが割り振られています。学校教育の常用漢字表(2,136字)にも含まれておらず、義務教育で個別の漢字として習うこともありません。私たちが無意識に漢字として扱っている文字の正体は、純粋な視覚的補助記号に過ぎないのです。