かつて新喜劇の舞台で見せた、周囲のボケを完璧に拾い上げる「回し」の技術。それは単なるお笑いのテクニックではなく、舞台上の空気を瞬時に読み解く卓越した観察眼の産物だった。その緻密なコントロール能力が、今、映画やドラマの現場で異彩を放っている。
多くのコメディアンが役者として「強いキャラクター」を演じたがる中、彼はあえて輪郭を曖昧にし、作品のトーンに同化する。この引き算の演技こそが、現在の映画界で彼が重宝される最大の理由だろう。主役を食うことなく、しかし確実に作品の質底を支えるその姿は、まさに職人そのものである。