墨汚れを前にして焦るあまり、ネット上の断片的な情報を鵜呑みにして誤った処置をしてしまうケースが後を絶ちません。以下の3つの行動は汚れを修復不可能にするため絶対に避けてください。
1. 熱湯(60℃以上)をいきなりかける
油汚れの感覚で熱湯を注いでしまう人がいますが、墨汁のバインダーである膠(にかわ)はタンパク質です。熱湯をかけるとタンパク質が熱凝固を起こして固まり、カーボンブラックを包み込んだまま繊維と強固に一体化してしまいます。使用するお湯は必ず40〜45℃程度の人肌より少し温かいぬるま湯にとどめてください。
2. 塩素系漂白剤(ハイター等)でいきなり漂白しようとする
塩素系漂白剤は有機色素の分子構造を破壊して脱色する薬剤です。しかし無機物の単体炭素であるカーボンブラックには化学反応が起きず、色は一切消えません。それどころか衣類の繊維(綿や化繊)そのものを脆化させ、黄色く変色(黄変)させる致命的なダメージを与えます。
3. 水につけていきなり全体を揉み洗いする
付着した直後に慌てて水で濡らし、手で全体を揉み込むと、表面にあった余分な墨汁が水分に乗って周囲の綺麗な繊維へ一気に毛細管現象で拡散します。結果として直径1cmの染みが10cmの巨大な染みへと拡大してしまいます。「まずは乾いた状態で吸い取る」「処置は局所的に叩き出す」が染み抜きの鉄則です。