「星のや京都」が他の高級旅館と決定的に一線を画しているのは、宿への到着プロセスそのものが旅のハイライトとして演出されている点です。JR嵯峨嵐山駅や阪急嵐山駅から嵐山へのアクセスを経て「星のや京都 舟待合」に到着した瞬間から、特別な滞在が幕を開けます。
宿泊客は専用の木造和船に乗り込み、エメラルドグリーンに輝く大堰川を約15分かけて上流へと進みます。川岸の四季折々の原生林、そびえ立つ断崖、そして川面を渡る清らかな風を感じながら進む時間は、まさに平安貴族の舟遊びを現代に再現したもの。宿に到着する頃には日常の雑踏やストレスが完全に洗い流されるという、巧みな心理的導入(エントランス・エクスペリエンス)が設計されています。
江戸時代の豪商・角倉了以(すみのくら りょうい)の旧別邸跡地に建てられた旅館をリノベーションした敷地内には、日本の伝統技法である「洗い出し」や「京唐紙」をふんだんに取り入れた数寄屋造りの建物が並びます。現代の快適性を保ちながら、100年以上の歴史が宿る木造建築の温もりを五感で味わえる点が、目の肥えた富裕層や記念日利用の旅行者に熱烈に支持される最大の要因です。