タイヨウの海賊団を語る上で欠かせないのが、作中年代で15年前に発生したマリージョア奴隷解放事件です。赤い土の大陸(レッドライン)の絶壁を素手でよじ登ったフィッシャー・タイガーは、世界貴族・天竜人の住まう聖地へ単身殴り込みをかけ、そこに囚われていた数千人規模の奴隷たちを一挙に解放しました。
この事件が卓越していたのは、タイガーが魚人族だけでなく、人間を含むすべての種族の奴隷を分け隔てなく解き放った点にあります。この時脱出に成功した人間の中には、幼少期のボア・ハンコックらゴルゴン三姉妹も含まれていました。
そして、海賊団結成時に導入されたのが「タイヨウの刻印」です。この赤い太陽のシンボルには、外部の人間には計り知れない哀切な配慮が込められていました。
天竜人の奴隷には、逃亡を防ぎ所有権を誇示するための「天翔ける竜の蹄(ひづめ)」という焼き印が生涯消えない形で皮膚に刻まれます。タイガーは、元奴隷たちの身体に刻まれた屈辱の烙印の上から、自らのシンボルである「太陽の紋章」を焼き直しました。同時に、元奴隷ではない通常の魚人船員たちにも同じ紋章を刻み込んだのです。
全員が同じ印を帯びることで、「誰が元奴隷で、誰がそうでないか」を外部からも仲間内からも完全に識別不可能にすること。元奴隷という消せない過去を抱える仲間を社会的な烙印から永久に守り抜くための偽装工作こそが、タイヨウの刻印の隠された真相でした。