煮物の成否を分ける境界線は、鍋に火をかける前の下ごしらえに集約されます。ここを省略すると、どれほど高級な調味料を使っても雑味と油浮きが勝る仕上がりになってしまいます。
まず理解すべきは、さつま揚げの油抜きが必要な理由です。市販のさつま揚げの表面には、製造時の揚げ油が酸化した状態で付着しています。この油膜は煮汁を強力に弾くため、調味料の浸透を遮断する最大の障害となります。熱湯を両面にかける、あるいは沸騰した湯で30秒ほどくぐらせて油抜きを行うことで、練り製品本来の魚肉の気泡が開き、だしの旨味をスポンジのように吸い込む状態へと変化します。
一方、こんにゃく攻略の鍵を握るのが、ちぎりこんにゃくの味染みテクニックとこんにゃくのアク抜きと下茹でです。包丁で滑らかに切ってしまうと表面積が狭まり、煮汁が滑り落ちてしまいます。スプーンや手を使って不規則にちぎることで、表面積が約1.5倍から2倍に増大し、裂け目に煮汁が引っかかりやすくなります。ちぎった後は塩揉みをして余分な水分と凝固剤(水酸化カルシウム等)特有の臭みを引き出し、熱湯で2〜3分下茹でして完全に水分を抜き去ることが、内部へ煮汁を呼び込むための必須プロセスです。