手軽に指先の毛をリセットできる毛抜きやピンセットですが、日本皮膚科学会の専門医らは「毛抜きを用いた自己処理の中で、手先・指先は特にトラブルが重症化しやすい部位のひとつ」と指摘します。毛を無理やり引き抜く行為は、毛根の周囲にある組織を物理的に引きちぎる破壊行為に他なりません。
指の毛を抜くことで生じる代表的なデメリットは以下の3点に集約されます。
1. 埋没毛(イングロウンヘア)の発生
毛を無理に引き抜くと、毛乳頭から毛がちぎれて途中で途切れることがあります。さらに毛穴周囲の皮膚が傷つき、修復過程で角質が肥厚して毛穴の出口を塞いでしまいます。行き場を失った新しい毛が皮膚の下で渦を巻くように成長し、黒いポツポツとした盛り上がりを形成する状態が「埋没毛」です。無理に取り出そうとして針などでつつくと、細菌感染を招き瘢痕(傷跡)として残る危険があります。
2. 毛嚢炎(毛包炎)と皮膚科での対処が必要な化膿
引き抜いた直後の毛穴は、いわば微細な「開放創(開いた傷口)」です。手先は日常的にスマートフォン、キーボード、電車のつり革などに触れるため、黄色ブドウ球菌や表皮ブドウ球菌といった常在菌が毛穴の深部に侵入しやすい環境にあります。これにより生じるのが毛嚢炎です。指の関節付近は皮脂腺が少なく皮膚が薄いため、一度炎症が起きると赤く腫れ上がり、ズキズキとした痛みを伴います。悪化した場合は皮膚科を受診し、ゲンタマイシンやフシジンレオ軟膏といった外用抗菌薬、重度の場合はクラリスロマイシンなどの内服抗菌薬による処置が必要不可欠となります。
3. 慢性的な炎症後色素沈着(PIH)による黒ずみ
毛を抜く刺激が繰り返されると、生体防御反応としてメラノサイトが活性化し、大量のメラニン色素が生成されます。皮膚の浅い層にメラニンが沈着すると、毛が抜けているにもかかわらず指の関節周辺が茶褐色に淀んで見え、清潔感を著しく損なう結果となります。