モバイル端末での動画消費がコンテンツ体験の中心となった現在、画面スクロールの手を止めさせる「視線フック」の重要性は過去最高に高まっています。顔が濃い俳優人気の理由を探ると、単なるルックスの好みを超えた、視覚認知のメカニズムが浮かび上がってきます。画面が小型化すればするほど、凹凸の少ないフラットな顔立ちはディテールが平坦に見えがちですが、眉弓(びきゅう)が発達し鼻梁が通った骨格は、自然光や照明の僅かな陰影を捉えて画面内に劇的なコントラストを生み出します。
キャスティングディレクターへの聞き取り調査によると、彫りが深い俳優特徴として「わずかな眼球の動きや眉間の収縮が引きのカメラアングルでも明確に伝達される点」が挙げられます。台詞による過剰な状況説明を嫌う海外向けサスペンスや歴史スペクタクルにおいて、目鼻立ちがはっきりした俳優は、ノンバーバル(非言語)で劇的緊張感を担保できる稀有なピースとして重宝されているのです。
また、記号化された美形が溢れるSNS空間において、視聴者の脳は「均質化された美」に対して視覚疲弊を起こしています。そこで求められているのが、生命力や土着性を感じさせる骨太な立体美です。この視聴者心理の揺り戻しこそが、濃密な顔立ちを持つ実力派たちへの再評価を決定づけています。