緒方賢一の演技を語る上で欠かせない要素が、業界屈指と称されるアドリブ力と、舞台演劇に裏打ちされた空間掌握能力です。特に2001年から放送されたテレビアニメ『星のカービィ』のデデデ大王役は、今なおSNSやネットコミュニティで語り草となっています。
「環境破壊は気持ちいいぞい」「国家の財政難を国民に転嫁して何が悪いぞい」といった、社会風刺とブラックユーモアに満ちた数々の名言・迷言は、緒方の破壊的なアドリブとスタッフ陣の阿吽の呼吸から生まれました。音響監督や演出陣が「緒方さんならこのキャラクターをさらに跳ねさせてくれる」と全幅の信頼を置いていたからこそ実現した伝説的な芝居です。
また、ゲーム分野や外画吹き替え作品においてもその手腕は光ります。洋画コメディの吹き替えや、ディズニー/ピクサー作品『トイ・ストーリー』シリーズにおけるスリンキー・ドッグ役(初代・永井一郎氏の逝去に伴う後任)など、先輩声優への敬意を払いながら自身のカラーを溶け込ませる柔軟性は、職人技の極致と言えます。