天ぷらがべちゃっと仕上がってしまう主因は、衣に含まれる小麦粉の「グルテン形成」と、食材内部から抜け出せない「余分な水分」にあります。小麦粉(薄力粉)に含まれるタンパク質は、水と合わさって練られることで網目状のグルテンを形成し、これが油の中で重く粘り気のある衣へと変化してしまいます。サクサクの天ぷらを揚げるための第一歩は、このグルテンの発生を極限まで抑え込むことです。
プロの厨房で実践されている最大の秘訣は、冷水または冷えた炭酸水を用いる手法です。粉と水は直前まで冷蔵庫でしっかり冷やしておき、合わせる際も箸で「叩くように」十数回軽く混ぜるだけに留めます。粉のダマが表面に残っている状態こそが、最もグルテンの発生が少ない理想的な衣です。炭酸水を使用した場合、加熱時に炭酸ガス(二酸化炭素)が一気に揮発し、衣の内部に無数の微細な空洞を作るため、専門店の揚げたてのような軽快な歯ざわりが生まれます。
さらに、油の温度管理も仕上がりを大きく左右します。夏野菜の天ぷらにおける油の適正温度は175℃〜180℃が基本です。菜箸の先を油の底につけたとき、全体から細かい泡が勢いよく立ち上る状態が目安となります。一度に大量の具材を投入すると油温が急激に20℃以上低下し、衣が油を吸い上げる原因になるため、油の表面積の半分が常に空いている状態を保ちながら少量ずつ揚げるのが鉄則です。