実業家として成功を収めた後も、舩坂の心からアンガウル島で散っていった戦友たちの姿が消えることはありませんでした。1966年に上梓した自伝的戦記『英霊の絶叫―玉砕島アンガウル戦記』は、戦場の過酷な真実を生々しく描いた名著として読書界で極めて高い評価を受け、ベストセラーを記録しました。
舩坂はこの書籍の印税や自身の私財を惜しみなく投じ、パラオ諸島をはじめとするかつての激戦地へ何度も足を運びました。現地での遺骨収集活動に尽力するとともに、自費でアンガウル島やペリリュー島に慰霊碑を建立。さらに、現地住民への教育支援や医療支援、交流事業を継続して行い、日パ友好の架け橋としての役割も果たしました。
自らの生還を「生かされた命」と捉え、散華した英霊への鎮魂と国際親善に生涯を捧げた舩坂弘は、2006年2月11日、85歳でその波乱に満ちた生涯を静かに閉じました。