ゴキブリの驚異的な繁殖力を支えている最大の要因は、メスの体内に備わっている受精嚢(じゅせいのう)と呼ばれる精子保存器官です。多くの動物は産卵や出産ごとに交尾を必要としますが、ゴキブリのメスは一度の交尾で受け取った精子を体内で生かしたまま長期間保管できます。
これにより、メスは生涯にわたりオスと再会することなく連続して受精卵を産み続けることが可能です。クロゴキブリの場合、1回の交尾で生涯に15〜30個前後の卵鞘を産出します。1個の卵鞘には20〜30頭分の幼虫が含まれているため、メス1匹が交尾を済ませているだけで、理論上300〜600匹以上の次世代が生まれる計算になります。
さらに近年、昆虫行動学の研究でも注目されているのが単為生殖(たんいせいしょく)の能力です。ワモンゴキブリやチャバネゴキブリなど一部の種では、周囲にオスが長期間存在しない極限環境に置かれると、メス単独で受精を経ずにメスのクローン卵を産卵する現象が確認されています。交尾相手が見つからなくても種の存続を諦めないこの二重三重の繁殖システムこそが、3億年以上姿を変えずに生き残ってきた最大の武器です。