山林の現場に視点を移すと、経済的な隔たりが浮き彫りになる。日本森林学会の学術報告や林野庁の木材流通統計を俯瞰すると、丸太の取引平米単価においてヒノキは常にスギの約1.5倍から2倍近くの高値を維持してきた。林業・製材業の担い手にとって、ヒノキは手入れに多大な年月を要する高付加価値商品であり、スギは成長が早くまとまった材積を確保しやすい量産型の主力資材という位置づけだ。
ところが近年、製材乾燥技術の飛躍的進化によって、スギの強度のばらつきが解消されつつある。かつて「柔らかすぎて構造には不向き」とされたスギが、精密な人工乾燥を経て高強度梁材へと生まれ変わり、低コストで頑強な躯体を生み出す選択肢として、工務店やプレカット工場の仕入れルートを大きく変え始めている。