忘却とは脳の生存戦略?記憶の仕組みと忘れる理由を徹底解明

忘却とは脳の生存戦略?記憶の仕組みと忘れる理由を徹底解明

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日常生活で使われる「忘却」という言葉は、日常会話レベルでは「一度覚えたはずの事柄を思い出せなくなること」を指します。心理学辞典などの学術的な定義に立ち返ると、「過去に経験・習得した情報や行動様式を再生あるいは再認することが一時的または恒久的に不能になる現象」と位置づけられています。

人間は忘れることに対して「罪悪感」や「老化への恐怖」を抱きがちです。しかし、進化生物学および計算論的神経科学の視点から見れば、すべての出来事を克明に記憶し続ける脳は生存に適していません。仮に過去のあらゆる詳細(昨日の夕食の米粒の数、すれ違った人物の靴紐の色など)を完璧に保持し続ければ、脳のエネルギー消費は限界に達し、意思決定のスピードは致命的に遅延します。

忘却の本質は「抽象化と一般化」にあります。個別の些細な差異をあえて忘れることで、「これは犬である」「これは危険な状況である」といった概念や本質的なルールだけを抽出し、未知の状況に素早く適応できるようになるわけです。忘却とは、脳がメモリのパンクを防ぎ、生き延びるために進化の過程で獲得した高度な情報選別システムに他なりません。

山下 哲也
著者

山下 哲也

デジタルガジェットとスマート家電の検証記事を多数執筆。失敗しないモノ選びを提案します。