走れメロスの友情は美談か?太宰治が描いた絆の深層と身代わりの真実

走れメロスの友情は美談か?太宰治が描いた絆の深層と身代わりの真実

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『走れメロス』の誕生秘話を語る上で欠かせないのが、太宰治の実体験に基づく「熱海事件」です。このエピソードは、作家・檀一雄の自伝的小説『小説 太宰 治』の中で生々しく記録されています。

昭和初期、太宰は熱海の温泉旅館に滞在して豪遊し、支払いが不能になりました。太宰は友人であった檀一雄を熱海に呼び出し、旅館に「人質」として残した上で、「東京の井伏鱒二のところへ行って金を借りてくる」と言い残して出発します。

しかし、数日待っても太宰は戻りません。不審に思った檀が宿の番頭とともに東京へ向かうと、太宰は井伏邸でのんきに将棋を指していたのです。激怒した檀に対し、太宰がつぶやいた言葉が「待つ身が辛いかね。待たせる身が辛いかね」という弁明でした。

ネット上の読書コミュニティやSNSでは「太宰はメロスではなく、ただの不誠実な居直り男ではないか」と揶揄されることも少なくありません。しかし文芸批評の観点では、この逃亡と裏切りの罪悪感、そして「こうありたかった理想の友情」への渇望こそが、『走れメロス』という傑作を生み出す熱量になったと評価されています。太宰は自身の情けなさを直視したからこそ、信じることの尊さを圧倒的な熱量で描き切ることができたのです。

山本 拓海
著者

山本 拓海

デジタルガジェットとスマート家電の検証記事を多数執筆。失敗しないモノ選びを提案します。