長らく日本のビジネスシーンにおいて、「靴」は妥協が許されない領域だった。ブラックのストレートチップこそが正義であり、スニーカーでの出社など言語道断——そんな硬直した価値観は、ここ数年で完全に過去のものとなった。
変化の引き金となったのは、オフィスファッションの急激なカジュアル化と、歩くことへの意識向上だ。しかし、単にアディダスやナイキの運動靴をスーツに合わせるだけでは、どこかチグハグな印象が拭えなかったのも事実。そこにすっぽりとハマったのが、コインローファーやタッセルローファーの顔立ちをしたスニーカーだった。アッパーには艶やかなオイルドレザーや上質なスエードを配し、ボトムには厚底のEVAソールやエアクッションを仕込む。正面から見れば仕立ての良いドレスシューズ、横や底から見れば最新フットウェア。この絶妙な騙し絵のようなバランスが、ビジネスパーソンの心を掴んで離さない。