皇室が伊勢神宮を参拝する際、移動の足として選ばれてきた歴史は極めて深い。かつて宮内庁がダイヤの調整や保安体制を協議する相手として、民間企業でありながら絶大な信頼を寄せたのが近鉄だった。その背景には、近鉄特急ネットワークが誇る圧巻の路線網と圧倒的な定時運行率がある。
戦後復興のさなか、昭和天皇が各地をご巡幸された時代から、伊勢を目指すルートの主役は常に近鉄の特急車両だった。国鉄の回送ルートや接続ダイヤとの兼ね合いを計算し尽くし、一秒の狂いも許されない厳密なダイヤグラムが編成されたのである。単なる「移動手段」を超え、国家的な行事を影で支える鉄道輸送産業の誇りが、そこには確かに宿っていた。