消費者の間で高まる焦燥感とは裏腹に、供給元のデータは全く異なる現実を示している。日本家庭紙工業会が公表した最新のデータや各大手製紙メーカーの発表によれば、国内のトイレットペーパーの生産実績およびメーカー倉庫の在庫量は、極めて良好な水準を維持しているという。日本のトイレットペーパー生産の多くを担う静岡県富士市周辺の製紙工場を取材すると、工場敷地内の倉庫には天地まで届くほどの勢いで商品が積み上げられていた。
「原料である木材パルプや古紙の調達も含め、工場の稼働率は100%に近い状態で安定しています。全国の皆さんが数ヶ月生活するのに十分すぎるほどの紙が、ここにはあるんです」。ある大手製紙企業の工場長は、積み上がった段ボールの山を背に困惑した表情を浮かべる。つまり、世の中からトイレットペーパーそのものが消失したわけではない。問題は「作る側」ではなく、工場から家庭に届くまでの「流れるルート」にあった。