明治45年、かつて「新選組最強の男」と恐れられた元二番組組長・永倉新八の回想という枠組みで紡がれてきた本作は、最終局面となる箱館戦争において最高潮のドラマを迎えました。読者が固唾をのんで見守ったのは、主人公・土方歳三がどのような「散り際」を迎えるのかという一点に尽きます。
史実における土方歳三は、一本木関門付近で銃弾に倒れたと記録されています。しかし『ちるらん』において描かれたのは、単なる敗残の死ではありません。死線を幾度も越え、己の信じる「武士道」と「仲間への誠」を貫き通した土方が、新時代の夜明けを前に満身創痍で敵陣へと切り込み、散っていく姿でした。近藤勇、沖田総司、芹沢鴨をはじめ、先に逝った隊士たちの幻影と魂を背負いながら刃を振るうその表情には、絶望ではなく、己の人生を燃やし尽くした者だけが湛える凄絶な笑みが刻まれていたのです。
そして物語は、回想を終えた明治末期の永倉新八が、新選組の真実を取材しに来た若き女性新聞記者・阿部薫に想いを託す場面へと接続されます。「散るからこそ美しいのではなく、散るその瞬間まで己の命を真っ直ぐに燃やし続けた」という生き様。これこそがタイトルの『鎮魂歌(レクイエム)』に込められた真意であり、連載開始当初から張り巡らされていたテーマの回収でした。