地域屈指の集客力を誇っていた神戸クックワールドビュッフェ伊勢崎店が営業終了を選択せざるを得なかった背景には、単なる一店舗の売上問題にとどまらない、複合的な産業構造の激変が存在していました。当時の業界関係者への取材や外食市場のデータから、決定打となった3つの要因が浮かび上がります。
第1の要因は、ビュッフェ業態を直撃した感染症拡大と生活様式の劇的変化です。トングや大皿を不特定多数が共有するセルフサービス形式は、衛生管理上の極めて厳しい制約を受けました。感染対策のための席数制限やアクリル板の設置、消毒工程の激増は、薄利多売を前提とする大型バイキングの損益分岐点を大幅に押し上げる結果となりました。
第2に、フランチャイズ(FC)運営企業のポートフォリオ見直しが挙げられます。神戸クックワールドビュッフェは、株式会社神戸物産が本部としてノウハウと食材供給を行い、各地の加盟企業が店舗運営を担うFC展開が主軸です。伊勢崎店を運営していたパートナー企業が、複数年契約の更新期を迎えるにあたり、将来的な設備投資負担と採算性を冷静に天秤にかけた結果、撤退という経営判断に至った経緯があります。
第3は、2022年以降に本格化した世界的な原材料・光熱費・物流費の三重苦です。同チェーン最大の武器であった「平日ランチ1,000円台前半・時間無制限」という破壊的プライシングは、急激な円安と輸入食材の高騰により維持が困難を極めました。客単価を急激に引き上げれば顧客離れを招き、据え置けば赤字が膨らむという構造的ジレンマが、郊外大型店の存続に重い影を落としました。