賃貸物件のDIYにおいて最大の懸念事項となるのが、退去時の原状回復義務です。結論から述べると、ダイソーの床シートを賃貸の既存フローリングへ直接貼る行為は極めてリスクが高いと言わざるを得ません。
国土交通省が定める「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、借主の故意・過失、あるいは善管注意義務違反による損耗・毀損は、借主負担による修繕が原則とされています。一般的な粘着シートに使われているアクリル系粘着剤は、時間経過とともに床材のワックスやコーティング被膜と化学結合を起こしやすくなります。貼った直後はきれいに剥がせても、半年から1年以上経過すると接着剤が硬化・変質し、剥がす際に強烈な糊残りや下地剥離を引き起こすケースが多発しています。
さらに見過ごせないのが、塩化ビニル樹脂に含まれる「可塑剤(かそざい)」の移行現象です。シートに含まれる柔軟成分が長期間の圧着によって既存のフローリングやクッションフロア側に浸透し、床表面を黄色く変色させたり、表面の保護層を軟化させてベタつきを定着させたりします。こうして生じた変色は通常のクリーニングでは落ちず、退去時に数万〜十数万円規模の床張り替え費用を請求される主因となっています。
一方で、ネット上で散見される「貼ってすぐに端から剥がれる」というトラブルには、全く逆の物理的要因が存在します。床リメイクシートが早期に浮いてしまう主な原因は以下の3点に集約されます。
第1に、施工前の床表面に残った皮脂汚れやワックスの油分、微細なホコリです。床は日常的に足裏の皮脂や料理の油煙が沈着しており、これらをアルコール等で完全に脱脂せずに貼ると、粘着強度が本来の半分以下に低下します。第2に、室内の温度・湿度変化によるシート自体の熱伸縮です。100均の薄型塩ビシートは気温の上昇で伸び、乾燥や寒冷で縮む特性が強いため、端部から徐々にテンションがかかってめくれ上がります。そして第3に、床暖房や直射日光による接着剤の劣化です。熱が加わる環境下では粘着層が軟化して保持力を失い、端の反り返りを助長してしまいます。