日常会話では混同されがちな二つの言葉ですが、道路交通法による定義において明確な境界線が引かれています。自車の進路を左右に変えたかどうかが、すべての判断の出発点となります。
道路交通法第2条第1項第21号では、「追越し」について次のように厳格に定義されています。
『車両が他の車両等に追いついた場合において、その進路を変えてその追い付いた車両等の側方を通過し、かつ、当該車両等の前方に出ることをいう。』
つまり、追い越しが成立するには以下の3ステップすべてを満たす必要があります。
- ステップ1(進路変更):前車に追いつき、右側(または別車線)へ進路を変える。
- ステップ2(側方通過):前車の横を通過する。
- ステップ3(前方進出):再び前車の前方(元の進路など)へ戻る、または前方へ抜け出る。
一方、道路交通法上に「追い抜き」という直接の法律用語は明記されていません。警察実務および判例上、「車線変更の有無」を基準とし、進路を変えずにそのまま進行して前車の側方を通過し、その前方に出る行為全般を「追い抜き」と定義して区別しています。
片側2車線以上の道路において、左側車線を直進中に右側車線の遅い車をそのままの速度で追い抜いて先に出る行為は、進路変更を伴わないため「追い抜き」となり、原則として合法です。しかし、左車線へわざわざ車線変更して前車の前へ回り込む行為は「左側追い越し」とみなされ、直ちに取り締まりの対象となります。