多くの野菜は冷凍すると食感が損なわれ、味も落ちてしまう傾向にあります。しかし、ぶなしめじをはじめとするきのこ類に限っては、まったく正反対の現象が起こります。なぜ凍らせるだけで格段に美味しくなるのか、そのメカニズムには明確な科学的理由が存在します。
生のぶなしめじの内部では、旨味成分を作り出す酵素(リボヌクレアーゼなど)と、その基質となる成分がそれぞれ固い細胞壁の中に閉じ込められています。これを冷凍すると、細胞内の水分が凍って膨張し、強固な細胞壁を内側から破壊します。その後、調理時に加熱されることで酵素と基質が急速に出会い、三大旨味成分のひとつである「グアニル酸」をはじめ、グルタミン酸やアスパラギン酸といったアミノ酸が爆発的に生成されるのです。
食品成分分析データや各種実験データによれば、冷凍したぶなしめじは生の状態と比較して、加熱後の遊離アミノ酸およびグアニル酸の溶出量が約2.5倍から3倍近くに跳ね上がることが確認されています。つまり、冷凍という工程そのものが、食材本来のポテンシャルを極限まで引き出す「究極の下ごしらえ」として機能しているといえます。