F-15には単座型(F-15J / F-15C)のほかに、キャノピー(風防)が前後に長いF-15J複座型(F-15DJ)が存在します。この後席コックピットは単なる「予備席」ではありません。
F-15DJの後席には、前席とほぼ同等の操縦装置と計器類が備わっており、主に若手パイロットを育成する教育訓練や、教官による飛行審査で使用されます。さらに、複雑な戦術訓練や電子戦のシミュレーションにおいては、後席の搭乗員が戦術評価やミッション管理を分担するバックシータ―(WSO: 兵装システム士官に類する役割)として機能し、複座ならではの高度な任務運用を支えています。
そして、万が一の墜落危機に際してパイロットの命を託すのが「ACES II」射出座席の仕組みです。この座席は、高度ゼロ・速度ゼロ(地上停止状態)からでも安全に脱出可能な「ゼロ・ゼロ射出能力」を備えています。
パイロットが股間の脱出ハンドルを引くと、わずかコンマ数秒の間にキャノピーが爆破・投棄され、座席下部のロケットモーターが点火してパイロットごと機外へ高速射出されます。その後、ピトー管で測定された対気速度と高度に応じて内蔵マイクロプロセッサが最適な展開シーケンスを自動選択。ドローグシュート(制動傘)が姿勢を安定させた後、主パラシュートが開き、パイロットを着地まで確実に保護します。