有名どころの熱狂を横目に、いま旅慣れた大人たちが密かに目指しているのが「リジェネラティブ(再生型)湯治」を掲げる知られざる隠れ名湯だ。混雑を極めるメジャー観光地をあえて避け、山あいの限界集落や鄙びた湯治場に、驚くほど洗練された小規模宿が誕生している。
たとえば東北や信越の山深くに佇むある湯治集落では、1日わずか数組限定で、加温も加水もしない100%源泉かけ流しの湯と、近隣の山菜や発酵食を組み合わせたフルコースを提供する宿が登場した。派手な看板も大型バスの駐車場もない。ただ圧倒的な湯力と、静寂だけがそこにある。情報の波に疲れた都市生活者が真に求めているのは、こうした「何もしない贅沢」を極限まで突き詰めた隠れ家なのだ。