新庄監督が使い続けたデサントの外野手用グラブには、一般的なプロ用グラブとは正反対の際立った特徴がありました。
通常、強い打球や送球を確実に捕球するため、外野手用グラブには一定の硬さや厚み、深めのポケットが求められます。しかし、新庄監督のグラブは極限まで薄く、ペラペラで超軽量に仕上げられていました。
革が薄いため、捕球時には手のひらにダイレクトに衝撃が走ります。それでも「ボールがグラブのどこに当たったのかが指先の神経で瞬時にわかる」という素手感覚を極限まで追求した設計でした。背面ポケットの深さや指の開き具合も完全に新庄監督の手の動きとシンクロしており、落下点へ猛ダッシュしながらノールックで打球を収める異次元の守備範囲を支えたのです。
しかし、革が薄いグラブを17年間も激しいプロの練習・試合で酷使すれば、当然ボロボロになります。ここで重要な役割を果たしたのが、デサントの専属グラブ職人たちの存在でした。
擦り切れた革の裏側から薄い革を一枚一枚あてがい、ミリ単位で元の感覚を狂わせないよう施された神業のようなリペア。職人たちは新庄監督の繊細な指先の感覚を壊さぬよう、縫い糸の太さや締め具合まで徹底的に調整し、奇跡の17年間を舞台裏で支え抜きました。