結びのフレーズである「みんなちがって、みんないい」は、現代では多様性(ダイバーシティ)を肯定するスローガンとして多用されています。しかし、文学的・心理学的な文脈から読み解くと、単なる「個性賛美」以上の切実な祈りが浮かび上がってきます。
当時の日本社会は、画一的な価値観や家父長制が色濃く残る時代でした。その中でみすゞは、他者と自分を比較して優越感に浸ることも、劣等感に打ちひしがれることも明確に否定しています。小鳥は空を飛べるから偉いわけではなく、人間は走れるから優れているわけでもない。それぞれが「そのものとして在る」こと自体が祝福されるべきだという思想です。
この解釈は、現代の臨床心理学で語られる「無条件の自己肯定感」と深く共鳴します。条件付きの自己肯定(何かができるから価値がある)ではなく、存在そのものを丸ごと受け止める境地です。他者を傷つけず、自己の弱さをも包み込むこの言葉は、過酷な現実の中で自己の尊厳を保ち続けようとしたみすゞの精神的防壁でもありました。