日本全国の愛好家が注目する「一般社団法人日本唐揚協会」主催の「からあげグランプリ」。毎年、名だたる専門店がしのぎを削るこの舞台で、近年顕著に見られるのが下味漬け込み調理法の目覚ましい進化だ。かつては長時間醤油に浸すだけの力技が主流だったが、現在の外食・食品産業では、肉のph(水素イオン濃度)をコントロールし、筋繊維の保水性を極限まで高める技術が競われている。
漬け込み時間が長すぎれば浸透圧で肉汁が抜け、短すぎれば中心まで味が届かない。塩分濃度を1.2%前後に設定し、肉の重量に対して絶妙な水分と油分を同時に抱き込ませる技法が、いまや業界のスタンダードになりつつある。舌の肥えた審査員たちを唸らせる名店の味は、もはや職人の勘ではなく、精緻な計算から生まれている。