秋のノーベル賞シーズンになると、メディアやネット上では「なぜ田中啓司博士はまだノーベル賞を受賞していないのか」「2004年のノーベル化学賞との違いは何か」という議論が頻繁に交わされます。この疑問の真相を学術的背景から紐解きます。
2004年、アーロン・チカノーバー氏、アブラム・ヘルシュコ氏、アーウィン・ローズ氏の3名に「ユビキチンを介したタンパク質分解の発見」によってノーベル化学賞が授与されました。このとき対象となったのは「分解対象に目印を付けるタグ(ユビキチン)の発見」でした。
一方、田中氏が解明したのは「目印を認識し、実際に巨大な裁断機としてタンパク質を粉砕・分解する実体装置(プロテアソーム)」です。いわば、荷札を貼るシステムと、配送された荷物を正確に処理する大型プラントの双方が揃って初めて生体機能が成立します。
国際学界の評価としては、「タグの発見」と「分解装置の解明」は車の両輪であり、生理学・医学の分野においてプロテアソームの機能解明と創薬応用に対する評価は極めて高い水準を維持しています。国際賞の受賞歴や論文の引用数(数万回以上)を見ても、生理学・医学賞枠での選出は現在も十分に現実的な射程に入っているというのが、科学ジャーナリズムの一致した見解です。