映画『凶悪』と日野のキャラクターを巡っては、インターネット上で長年語られる中でいくつかの誤解や混同が生じています。ここで事実関係を整理し、誤った認識を正しておきましょう。
誤解1:日野は映画の劇中で死亡した?
劇中のテレビニュースのアナウンスをよく聞くと、交際相手の女性は「焼死」と明言されていますが、「日野は全身やけどを負い、意識不明の重体」と報じられています。つまり、劇中では死亡したとは明言されていません。しかし、あまりにも凄惨な炎上シーンのインパクトから、「日野もその場で焼き殺された」と記憶違いをしている視聴者が少なくありません。生き残ったとしても、心身ともに再起不能の重傷を負わせるという、須藤のどこまでも執拗な悪意が表現されています。
誤解2:日野のエピソードは実話にそのまま存在する?
前述の通り、実際の「上申書殺人事件」の告発状(3件の殺人)の中に「日野」という実名や、全く同じ状況で恋人とともに放火された事件が単一の起訴事実として入っているわけではありません。後藤良次が過去に起こした様々な傷害致死、暴力団抗争、監禁リンチ事件の記録を巧みにコラージュし、映画の劇的緊張感を最大化するために構築されたエピソードです。「実話そのまま」と思い込むと事件の全体像を見誤ることになりますが、そこで描かれた暴力の生々しさ自体は、後藤の実際の行動様式と完全に一致しています。